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五井野正博士の世界

原発による環境及び人的影響N

福島原発事故は人類史上最悪の原子炉事故

被曝量の実際
メルトダウンの処理は核爆発や水蒸気爆発の可能性もあるような巨大な悪魔との戦い

 都合の良いデータだけを出し、都合の悪いのはヒタ隠しする。これが、日本の官僚体質であり、原子力を推進する原子力村の人たちの常套手段なのである。
 ところが、政権を取ってまだ日が浅い民主党は官僚コントロールがまだ下手で狡猾な官民一体の企業論理もまだ理解できていないために、若くて純な議員たちほど役人たちにこの方法でコロッとだまされてしまうのが大なのである。
 それゆえ、初めからメルトダウンしたと東電や保安院が発表していたら政府の対応もまるっきり違ったはずだ。と言うのも、メルトダウンになった時の対策は経験も知識もない作業員や学者、自衛隊や消防隊員などにまかせないで、チェルノブイリ事故の経験者や米国やロシア、ドイツの特殊部隊や専門技術者に初めから任せたほうが良かったからだ。
 原発事故の処理というものはもはや戦争と同じものだから、戦争放棄をして平和を尊ぶ日本人には処理は向かないし、金よりも生命の問題として日本人の生活と平和を政府や東電はもっと真剣に考えてほしい。
 と言うのも、メルトダウンの処理というものは劣化ウラン弾よりもひどい放射能を出し続け、核燃料が圧力容器の底を溶かして格納容器に落ち、さらに格納容器の底を溶かして鉄筋コンクリートの中に沈みこみ、さらに地面深く落ち込んでいくだけでなく、核爆発や水蒸気爆発の可能性もあるような巨大な悪魔との戦いであることくらい専門家だったら誰でも考え付く想定内の事実だからだ。
 つまり、核燃料棒の酸化ウランの融点は2700度のため、この核燃料棒が溶けて圧力容器の底に落ちれば、鋼ステンレス製の圧力容器の融点は1520度近辺だからその温度差は1180度以上ある。しかも圧力容器は厚いといってもたったの16pの厚さである。格納容器の場合は鋼鉄製で融点は約1550度で、厚さはたったの3pしかない。
 となれば、仮に融点が1084度の銅をドロドロに溶かしたものを厚さ16pの氷の容器の下に流したら氷はどんどん蒸発して穴を開けてしまうだろう。それと同じというよりは、ドロドロに溶けた核燃料はどんどん崩壊熱を出し続けて熱くなる一方だから容易に圧力容器の穴を溶かしてしまうことがわかるだろう。しかも、格納容器に落ちたドロドロの核燃料は3pの鋼鉄を簡単に溶かして格納容器に穴を開けてしまうことは誰にでも理解できるはずだ。


ドロドロの核燃料は崩壊熱を出しながら土壌に落ち込み地下水脈に触れると水蒸気爆発を起こす

 そして、ドロドロの核燃料は崩壊熱を出しながら徐々に土壌の中を落ち込んでゆくが、やがて地下水脈の水に触れると水蒸気爆発を起こす。その時の水の量や核燃料の温度、形状によって爆発の仕方も違ってくる。それからはシミュレーションの世界で何が起きるかわからない未知の世界である。また、それと同時に地下水や周囲の土壌を放射性物質で汚染してしまう。
 そこで、このような状況を防ぐために原発の建物の周りを深く掘って地下水脈を遮断し、チェルノブイリ事故の教訓を生かして、原子炉の床下全体を強固にして溶けた核燃料を封じ込めなければならない。
 これが、2〜3ヵ月たった今になって、「はい、メルトダウンしていました。さあ、どうしましょう」ではどうにもならないだろう。溶けた核燃料は今どの位置にまで落ち込んでいるのか、さっぱりわからないのでは対処の仕方がわからないではないか。
 ヤキモキする私がついに社稷会という有力政治家や経済人たちの集まりの会の中で原発事故担当大臣にわざわざ指摘せざるを得なかったというのが実状である。
 ワイワイ、ガヤガヤと騒いでも結果が付いてこなければ、だたのお祭り騒ぎだ。お祭りだって神様が降りてくればただの祭りでなくなる。神様に一括、気魂を入れられてこそ人々に明日があるというものだ。
 そして、6月6日には”ビートたけしのTVタックル“の放送で前述した武田教授が原口一博元総務大臣や自民党の石原伸晃幹事長と共に出演した番組の中で、メルトダウンについて「循環水が動かなくなったら何時間後にはどうなるか(官邸は)わかっている」と発言していた。
 すると、「みんなの党」幹事長江田憲司議員は「細野補佐官も会議で認めました。メルトダウンしたことをこのまま公表すると国民に不安を与えるから(官邸が)隠したということを」と発言すると、司会の女性が「やっぱり隠していたんですか」の一言。
 そのあと、終了寸前に、石原議員の、「このまま公表するわけにはいかないから我々も黙っていた」というぼやき発言がネット上で話題となった。
 この番組でも3月11日の福島原発事故に関して政府が東電や保安院からメルトダウンが起きたこと、それによってSPEEDIの放射能拡散図が政治家の幹部に知らされていたことなどが石原議員の本音言葉で暴露されてしまった。
 父親の石原慎太郎東京都知事の本音発言が時々国民の論議を巻き起こすが、そのような父親譲りの気質を受けたのか、ふいと本音を漏らしてしまった感じだったが、父親のように威丈高で話せば評価はかえって高くなったと思う。威丈高になれず、人に優しい性格が裏目に出てしまった感じだ。


注水すればする程、汚染水が太平洋側に流れ出し、日本周辺の魚は放射能汚染で食べられなくなる可能性が大

 そして、この番組で新たな問題提議としてSPEEDIの拡散図を政府は国民に隠していたという点がクローズアップされてきたのである。ここに政府はIAEA(国際原子力機関)に福島原発1〜3号機のメルトダウンを報告し、溶けた核燃料は圧力容器の底を溶かして格納容器に落ち、さらに格納容器の底までも溶かしたメルトスルー状態になっていることを正直に報告したのである。
 と言うのも、海外の専門家は日本の原子力村の想定内しか知らない学者と違って常識的な判断と分析をしているために、真実を隠せないというよりも騙せないからである。
 これによって福島原発事故はIAEAの報告書を通してチェルノブイリ原発事故よりもはるかに最悪の原子炉事故、つまり人類史上最悪の原子炉事故のもっか最中であるということを全世界に知らせたのである。
 それならば、この2ヵ月間の東京消防庁や自衛隊の決死的な注水作業や冠水作業は一体なんだったのか!?注水すればする程、放射性物質を含んだ高濃度の汚染水が穴の空いた格納容器からどんどん外へ垂れ流しただけじゃないのか!という国民の声をもっと大にしなければいけないと思う。
 そこでもし、私がこのことを原発事故担当大臣に指摘しなかったら東電はいつまでもこのような馬鹿なことを続けていたのであろうか!?まったく、東電や保安院の態度にはあきれかえってしまうのだ。
 何故ならその結果、これからも数十万トン以上の汚染水を太平洋に流して漁民の生活を奪い、やがては日本近海どころか周辺一体の魚は放射能汚染によって食べられなくなる可能性が大だからである。
 しかも、太平洋に流した汚染水に対し、太平洋に面した各国の漁民や被害者たちが莫大な損害賠償を日本に請求してくる可能性もあるからだ。
 さらに10万トン以上の汚染水(放射能量は約72万テラ〈兆〉ベクレル)を福島第一原子力発電所の敷地内に溜め込んできた。一説にはこの汚染水の処理に20兆円とも40兆円とも言われた日本国民の金がフランスのアレバ社に注ぎ込まれるという話もあったが、これは汚染水の処理料が1トン1〜2億円という、ためにならない噂が流れたからであろう。

(次号へ続く)

              
五井野 正 (ごいの ただし) 科学者・芸術家
ウィッピー総合研究所 所長 / ロシア国立芸術アカデミー名誉正会員
スペイン王立薬学アカデミー会員 / アルメニア国立科学アカデミー会員
フランス芸術文化勲章受章
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