山口善生さん

山口善生
 外国人がもっている日本のイメージ「富士・桜・芸者」は浮世絵に描かれた富士山(北斎の赤富士)や歌舞伎の芝居絵に描かれた桜や花魁(おいらん)からきていると言われています。
 山口善生さんは仕事のかたわら奥さんの多恵さんとともに、日本を代表する文化であり世界に通用する美術品である浮世絵の研究を続けながら各地で展覧会を開催し、浮世絵の啓蒙活動を行なっています。山口さんに浮世絵についていろいろお話を伺ってみました。

公務員
米国公益法人歌川派門人会正会員
国際自然社会科学アカデミーアルメニア支部名誉博士
マルタナイト(アーミンジャー)
彩の国浮世絵研究会代表
大宮市在住
◯浮世絵は印象派誕生の発端になったと言われていますが。
☆その通りですね。江戸時代末期、フランスの画家ブラックモンが日本から送られてきた伊万里焼の包み紙に使われていた北斎漫画の一片を発見し、マネやドガら友人に見せて回ったことが発端のようですね。

◯浮世絵は庶民にとってどういう役割を果たしていたのですか。
☆当時は庶民の文化だったですからね。メディアであり、現在の新聞やチラシ、ブロマイドに当たっていたんだと思いますね。

◯浮世絵は世界的にどういう評価を受けているのですか。
☆浮世絵は日本を代表する文化として又、世界に通用する美術品として評価されていますね。フランスのルーブル美術館やイギリスの大英博物館など有名な美術館には殆んど所蔵されていますからね。

◯ゴッホは日本に憧れていたと聞いていますが。
☆ゴッホの残した書簡に「私は日本に行きたい。」と書かれているんです。そして日本と気候、風土のよく似た南フランスのアルルに移住し絵を描き続け、400枚もの浮世絵を収集しています。それらはオランダのゴッホ美術館に所蔵されているんですが、浮世絵に描かれた江戸時代の日本に憧れ続けていたんでしょうね。

◯米国公益法人歌川派門人会の初代会長五井野正博士はゴッホ研究の世界的な権威者だということですが。
☆その通りですね。浮世絵に鏡絵というのがあるんですが、その中にゴッホ自身が描いた自画像を描き入れてゴッホの願いを叶えるという画期的な作品「鏡の中のホッホ」を発表し、世界中で大反響を呼び起こしましたね。

◯ゴッホは歌川派の作品を多く収集していたようですが。
☆源氏絵など9割が歌川派の作品で占められていますね。

◯浮世絵には流派がたくさんあるのですか。
☆ありますね。「見返り美人」で有名な師宣は菱川派ですし、北斎は葛飾派です。歌川派は江戸時代後期の最大流派で有名な絵師に国貞、国芳、広重がいます。中でも国貞は歌川派の総帥三代歌川豊国として長い間浮世絵界のトップにいましたね。


西国八番 長谷寺 1858年

三美人花見の図
喜多川歌麿画 1800年頃
◯浮世絵はどのようにして制作されたのですか。
☆現在の版画のように一人で制作されたものではありません。版元、絵師、彫師、刷師の共同作業だったんですね。

◯版元は今でいう出版社に当たると思いますが。
☆そうかも知れませんね。版元の依頼を受け絵師が絵を描き、彫師が版木を彫り、刷師が刷るんですから。刷師は今でいう印刷屋さんというところでしょうか(笑い)。

◯山口さんは浮世絵の研究を始めて何年になるのですか。
☆15年になりますね。平成2年8月に歌川派門人会が発足してからは、初代会長の五井野博士が国内外で開催される絵画展及び浮世絵展に参加させて頂きながら私自身も何回か浮世絵展を開催し浮世絵の啓蒙活動を行ってきました。

◯観音霊験記の収集を始めたきっかけをお話し下さい。
☆私は奈良県の西国八番礼所の長谷寺の近くで生まれ育っているんですが、浮世絵の勉強を始めてから観音霊験記のシリーズがあることを知りびっくりしました。これはぜひとも研究してみたいとの想いから集め始めました。

◯観音霊験記とはどういうものですか。
☆江戸の末期、観音信仰が盛んだった西国順礼の礼所に題材を取り、三代歌川豊国がお寺の霊験に因んだ絵を描き、二代歌川広重が境内の風景を担当した合作の三十三枚シリーズなんです。霊験記には様々な人々の願いや気持ちが記されていますが、歴史上の人物の意外な言い伝えも紹介されており、歴史的にも貴重な資料だと考えているんですよ。


浮世絵・切手文化館の展覧会場の
長谷寺の前での山口さん
◯奥様も浮世絵を収集しているようですが。
☆家内は大豆料理を研究しているものですから、料理に関する浮世絵を集めているんですね。今、浮世絵・切手文化館で家内が収集している料理に関するものと、私の観音霊験記を合わせて展覧していますので見て頂きたいですね。

◯浮世絵の魅力をお話し下さい。
☆まず、色彩の美しさですね。それに雰囲気、ゴッホが憧れた江戸時代の日本の文化水準の高さとでも言いましょうか、そして彫師や刷師の神業としか思えない洗練された職人の技術など本当にすばらしいですね。

◯浮世絵収集で楽しいと思うことをお話し下さい。
☆世界に誇れる日本の宝、美術品である浮世絵を常に手に取って見ることが出来ることですね。見ていると本当に楽しいんです。見飽きないですね(笑い)。海外に行ってもコレクターと紹介されると非常に尊敬されますし、ハイソサエティの人々との交流も可能ですからね。

◯最後に秋田の皆さんにコメントをお願いします。
☆観音霊験記の浮世絵を通じて江戸時代以前の人々の生き方や願いを知って頂きたいですね。それから江戸の宴を描いた浮世絵の中から浮世絵の楽しさを発見して頂きたいと思います。ぜひ足をお運び下さい。

◯ありがとうございました。

あ と が き

外国人がもっている日本のイメージ「富士・桜・芸者」は浮世絵に描かれた富士山(北斎の
赤富士)や歌舞伎の芝居絵に描かれた桜や花魁(おいらん)からきていると言われています。
山口善生さんは仕事のかたわら奥さんの多恵さんとともに、日本を代表する文化であり世界
に通用する美術品である浮世絵の研究を続けながら各地で展覧会を開催し、浮世絵の啓蒙活動
を行なっています。山口さんに浮世絵についていろいろお話を伺ってみました。


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